未熟児の血漿G-CSF濃度の検討 

- 化学発光を用いた高感度測定法による検討 -

名古屋大学小児科    ◯水野誠司*、
名古屋第一赤十字病院 小児医療センター
 新生児科 鈴木千鶴子
同 血液腫瘍科   小島勢二
*現、トヨタ記念病院小児科

【目的】近年、未熟児の生後早期の顆粒球造血の変化、および未熟児の各種病態に顆粒球コロニー造血因子(G-CSF)の関与が示唆されているが、その正常値は今までの測定法では感度以下であった。今回測定下限2pg/mlの、化学発光を応用した新しい測定法により未熟児、成熟児の臍帯血および末梢血を測定したので報告する。

【対象および方法】母体および児に感染徴候を認めなかった下記の症例。未熟児臍帯血(n=7)、平均在胎31週(27.4-36.0週)、出生時体重1435g(908-1792g)。未熟児末梢血(n=6)平均在胎27.8週(25.0-31.6週)、出生時体重1016g(840-1298g)、採血時日齢58日(8-135日)。成熟児臍帯血(n=8)平均在胎38.8週(37.6-40.1週、出生時体重3071g(2685-3520g)。成熟児末梢血(n=6)平均在胎37.6週(36.1-39.5週)、出生時体重2584g(2170-2930g)、採血時日齢14日(7-24日)。測定法の原理は血漿中のG-CSFをポリスチレンビーズ結合抗G-CSF抗体とGOD標識抗G-CSF抗体のサンドイッチ後、glucose添加後のH2O2をルミノール化学発光により測定し標準曲線から値を得る。

【結果】未熟児臍帯血 19.4pg/ml(3-68pg/ml)。未熟児臍帯血 15.3pg/ml(8-39pg/ml)。成熟児末梢血 83.6pg/ml(36-222pg/ml)。成熟児末梢血13.3pg/ml(7-23pg/ml)。

【考案】臍帯血中G-CSF濃度は末梢血中より高く、未熟児において成熟児よりも低値であった。しかし個体間のばらつきが大きく、周産期環境が異なることから未熟児のG-CSF産生能が低いとの結論づけはできない。分娩様式による差も示唆される(帝王切開群29.6pg/ml;経腟分娩群102pg/ml;p<0.05)。好中球数の安定した生後1週以降の末梢血中濃度は、未熟児、成熟児とも同方法で測定され報告されている成人の正常値ほぼ等しかった。臍帯血は、破水、子宮収縮、母体の薬物など、母体胎盤系からの影響があり、それらが児の血中サイトカイン濃度に影響を及ぼしている可能性もある。今後、周産期の各種要因の血中G-CSFへの関与について検討が必要となろう。 

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